影がひとつ落ちた。
影は黒く広がり、
自分と自分を取り巻く世界を飲み込んでいった。
影は笑う。
とても綺麗な声をあげて、
とても魅力的な囁きを秘めて。
影は笑う。
まばゆい笑顔と、
優しい目をして。
私はそれが影であることに気づかない。
たとえ気づいたとしても、
疑問の範囲に留まるのみ。
影が影であることの確信がいかぬ間に、
夢はすべて影に取り込まれていく。
そして自分を取り巻く世界がすべて影になっていたとしても、
私はそれに気づかないし、
気づこうとしない。
なぜなら、
それが影だと気づいた瞬間に、
私は光を失うから
影は笑う。
影が落ちたことを気づかない、
気づこうとしない私を横目で見ながら、
影は笑う。
とても綺麗な声をあげて、
とてもまばゆい笑顔で。